厚生労働省の発表によると、何らかのアレルギー疾患を有している人は、2005年には日本人の約3人に1人でしたが、現在では約2人に1人の割合まで増加していると言います。アレルギー症状の原因は、金属、花粉、食べ物など様々ですが、アレルギー対策において重要なことは何が原因でアレルギー反応が起きているのかを突き止めることです。近年、様々なアレルギー症状の原因となっているのが、ダニです。その背景には、気密性の高い住宅が増え、ダニが繁殖しやすい住環境になっていることが考えられています。ダニアレルギーというと、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎などの比較的軽い症状を想像する方が多いかもしれません。よくある症状が、「くしゃみや鼻水が出る」「目がかゆい、充血する」といったものです。しかしながら、ダニアレルゲンは、症状が重篤化しやすい気管支喘息やアトピー性皮膚炎をもつ方の7~8割の原因となっていると言われています。
そこで、今回は最近注目されている、善玉菌を活用したダニアレルギー対策をご紹介したいと思います。
ダニアレルギーとは
ダニアレルギーとは、生きているダニに対してのアレルギー反応ではなく、ダニの死骸や糞に含まれるタンパク質が原因となっています。ダニの死骸や糞は、0.01mm以下の小さな粒子となり空中に浮遊します。それらが呼吸とともに体内に入り込み、異物として身体が認識すると、排除するために「IgE抗体」が作られ、再度体内に入った時にアレルギー症状が出るようになります。
ダニはフケ・アカ・汗をエサとして繁殖
アレルギー疾患の原因となるダニは、チリダニ科のコナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニの2種がほぼ8割を占めています。これらのダニが人を刺すことはなく、人や動物のフケ、アカ、汗などをエサとして繁殖します。ダニは十分なエサに加えて、気温20~30℃、湿度50~80%にといった好条件が重なると、たった1組のつがいが2ヵ月で約3,000匹もの卵を産むと言われています。18日~29日で卵から孵化し、寿命は3ヶ月~1年程度です。
ダニは通年住環境で繁殖しますが、最も繁殖しやすい環境は6~8月で、その間に産卵をして爆発的に数が増えます。夏場に増えたダニの糞や死骸がアレルゲンとなり、ダニアレルギー症状は9~10月にピークとなります。
従来のダニアレルギー対策
ダニアレルギー対策のポイントは以下の3つです。
ダニを除去する
アレルゲンとなるダニの死骸と糞を取り除く
ダニの繁殖を抑制する
その具体的な方法として以下のような対策が一般的に推奨されています。
掃除機をかける。
フローリングにする。(カーペット、畳はできるだけやめる)
室内温度20~25℃、室内温度20~25℃に保つようにする。
ダニ取りシート、薬剤を使用する。
シーツ・布団カバーを洗濯する。(週1回)
布団を天日干しにする。(週1回)
空気洗浄機を設置する。
家の中で最もダニが繁殖しやすいのがダニにとっての好条件となるエサ(フケ・アカ・汗)、そして温度と湿度の整う寝具です。質の良い睡眠が免疫力を高めるのは既知の通りですが、その免疫力が睡眠中にダニアレルゲンに対して使われてしまい、睡眠の質が下がってしまうという悪循環が起こります。
そこで、寝具におけるダニアレルギー対策が重要となりますが、シーツやカバーなど洗濯できるものもありますが、マットレスなど洗濯が難しいものもあります。更に、枕、布団、マットレスは分厚いため、空気洗浄機や掃除機でダニの糞や死骸を取り切ることは困難です。
そこで、最近注目されているのが、善玉菌(バチルス菌)を活用したダニアレルギー対策です。
善玉菌を活用したダニアレルギー対策
ご存知のように、人体に良い影響を与える微生物は「善玉菌」と呼ばれています。善玉菌には多くの種類があり、繁殖する場所や条件もそれぞれ異なります。馴染みが深いのが腸内環境を良くするとして知られている乳酸菌かと思います。乳酸菌はオリゴ糖をエサとして繁殖します。
腸内における善玉菌と同じように、空間においても人体に良い影響を与える菌が存在します。山や川といった自然豊かな環境にいる枯草菌というグループの善玉菌で、納豆菌もその一種です。近年、欧州における研究により、枯草菌の中に、ダニアレルギー対策となる特性を持った菌がいることが明らかになりました。バチルス菌と呼ばれる善玉菌で、ダニのエサとなるフケ、アカ、汗を同じく消費するため、同空間においてダニのエサが不十分となり繁殖を抑制することができます。更に、バチルス菌は、ダニの糞や死骸をエサとして増殖するので、アレルゲンを軽減するだけでなく、人体に良い影響を与える空間を形成します。
【善玉菌(バチルス菌)によるダニアレルギー対策の効果】
理論上は、上記のようなメリットがあることが証明されていますが、実際に空間にバチルス菌を投下するのは以下のような課題がありました。
生きたバチルス菌を住環境に投下する方法
バチルス菌にとっての好条件が住環境に必ずしもあるとは限らない(温度、湿度)
一定量(効果が十分にでる量)のバチルス菌の投下
上記を克服したのが以下の研究と技術です。
バチルス菌を仮眠状態にして保管する技術
異なる特性を持ったバチルス菌を選定し数種類組み合わせる
バチルス菌を高濃度で液体に含有する技術
この研究技術を使った実験結果を次にご紹介致したいと思います。
実験結果:バチルス菌のアレルゲン減少に対する効果
研究論文
「善玉菌(バチルス菌)を含んだ空間噴霧用スプレーのアレルゲンに対する効果」(2010年)
研究者
ウテ ステファン教授 ベルギー BMA研究室 マネージャー
研究目的
バチルス菌を含んだスプレーがアレルゲン※の軽減に効果があるか
※アレルゲン:主要なアレルゲンについては様々な意見があるが、ヒョウヒダニの主アレルゲンは、Der p1/Der f1の2つであると、多くの研究者が同意している。そこで、同実験ではDer p1/Der f1の2つに対する効果を検証。
実験場所
ベルギーの研究所(BMA研究所)
使用製品
バチルス菌を含んだ空間噴霧用スプレー
実験方法
約20×20cmのマットレスを6枚用意し、それぞれをアレルゲンDer p1/Der f1を含む埃1gを処理。
上記を以下のA・B(各3枚)で処理
A.未処理のマットレス(サンプル1~3):何も処理せずに放置。
B.バチルス菌で処理したマットレス(サンプル4~6): バチルス菌を含んだ空間噴霧用スプレーを1日1回噴霧。(1~10日目までは毎日。以降は12日目と14日目に各1回ずつ。)
14日後にそれぞれのアレルゲン量を測定し、平均値を比較。
実験期間
14日間
結果
アレルゲンDer p1はAよりもBの方が55.9%少なかった
アレルゲンDer f1はAよりもBの方が59.7%少なかった
よって、バチルス菌がアレルゲンの減少に効果があることが明らかになった。
空間における善玉菌を活用したダニアレルギー対策のメリット
先に述べたように、ダニアレルギー対策には、掃除を小まめにするという方法から、ダニとりシートなど様々あります。それらに対して、善玉菌(バチルス菌)を利用したダニアレルギー対策には以下のようなメリットがあると考えられます。
手軽にできる:空間に噴霧をするだけ
安全である(化学薬品を使用していない)
手の届かないところまでバチルス菌がアレルゲンを除去してくれる
バチルス菌自体が人体に有益である→免疫力にプラスの働きがある
バチルス菌がダニのエサを消費する→ダニ繁殖の抑制効果がある
様々なアレルギー症状の原因となるダニアレルゲンへの効果的かつ環境に配慮した対策として、バチルス菌の活用が今、多いに期待されています。
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