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肌フローラに注目したアトピー性皮膚炎改善方法【独の大学実証】

更新日:2023年7月12日




 近年、日本においてアレルギー性皮膚炎患者が急増していると言われています。厚生労働省の患者調査の総患者数によると、2008年に約35万人だった患者は、2017年には16万人増の約51万人になったと言われています。アレルギー性皮膚炎の中でも、慢性化、重症化に多くの人が悩んでいると言われているのが、アトピー性皮膚炎です。

 そこで今回のコラムでは、近年注目されている善玉菌で肌のバリア機能を強化することで、アトピー性皮膚炎の症状を改善するという新しい治療方法の可能性をご紹介致したいと思います。



アトピー性皮膚炎を引き起こす『環境要因』とは

 

 アトピー性皮膚炎の原因は、遺伝や体質など多様な要因が複雑に絡んでいるとされており、未だに解明されていません。よって、アトピー性皮膚炎には、病気そのものを完全に治す薬物治療がないため、症状が出たら、炎症鎮静効果のあるステロイド外用薬を塗るといった対処治療が原則でした。従来の外用薬による治療の問題点は、薬により炎症を抑えることはできても、炎症の原因を取り除いたわけではないので、再び炎症が起きるということを繰り返し慢性化するという点でした。

 しかしながら、近年注目されるようになった治療が「善玉菌で肌のバリア機能を強化する」という治療方法です。

 独立行政法人 環境再生保全機構によると、アトピー性皮膚炎に有効な治療は、以下の2つをセットで行うことであるとしています。


  1. ステロイド外用薬を使用して皮膚の中で起こっている炎症をとること

  2. 皮膚を清潔にして保湿するスキンケアを行ってバリア機能を強化すること





肌の持つバリア機能とは

 

 人間の皮膚には、体内の水分を保ち、また外からアレルゲンや雑菌などの外敵が体内に入り込まないように保護するバリア機能があります。アトピー性皮膚炎患者の皮膚は、このバリア機能が低下しているため、症状悪化の原因となる黄色ブドウ球菌が繁殖しやすく、更に炎症が悪化させるという悪循環に陥りやすいです。

 そこで、近年アトピー性皮膚炎患者に取り入れられているのが、「プロアクティブ治療」と呼ばれる肌を清潔かつ保湿された状態にすることで肌バリア機能を高める治療です。具体的には、身体を丁寧に洗って黄色ブドウ球菌を落とし清潔な状態にした後、保湿剤を塗布するというスキンケアです。

 この「プロアクティブ治療」の効果を更に高めると期待されているのが、肌フローラを整える効果のある善玉菌を取り入れた保湿剤です。



「肌フローラ」を整えて肌のバリア機能を強化

 

 「フローラ」と聞いて、皆さんが最初に思い浮かべるのは「腸内フローラ」ではないでしょうか?ご存知のように、人の腸内には、多種多様な細菌が生息しており、その数なんと約1,000種100兆個と言われています。それらの細菌が形成する集合体がフローラ(微生物叢)であり、このフローラにおいて、人の健康にとって有益な善玉菌(プロバイオティクス)が優位にあることを「腸内フローラが整っている状態」と言います。長引くコロナ禍において、決定的な治療薬がない中、乳酸菌に代表される善玉菌を含んだ製品を摂取することで、腸内フローラを整え免疫力を高めるという考え方が急速に広まっているのは周知の通りです。

 このような微生物叢は、体内だけでなく、人の皮膚にも形成されており「肌フローラ」と呼ばれています。肌フローラにおいて、雑菌(悪玉菌)が優位な状態だと、肌の免疫力、つまりバリア機能が低下し、皮膚炎の原因となる雑菌が更に繁殖しやすくなります。 逆に、肌フローラにおいて善玉菌が優位だと、肌のバリア機能が高く、健康な状態になります。




【参考資料】


  悪玉菌が優位な肌フローラの状態       善玉菌が優位な肌フローラの状態


 皮膚におけるフローラ(微生物叢)の研究が進む中、保湿剤に善玉菌が含まれていれば、肌フローラをより効果的に整えることができ、バリア機能を高めることができるのではないかと考えられるようになりました。しかしながら、生きた菌を保湿剤に使用することは、保存方法などの技術的な問題に加え、肌フローラが乱れた状態の皮膚に、善玉菌が常在できるようになるには、一定条件を満たさないと難しいという課題が顕在化しました。

 それらの障壁を克服したのが、欧州で開発された以下の特許技術です。


  • 生きた善玉菌を仮眠状態で保管する技術

  • 善玉菌を保湿剤に高濃度で含有する技術

  • 善玉菌の栄養源となる水溶性食物繊維と善玉菌をカプセルにして保存する技術


 更に、どの善玉菌が皮膚に最適かも、厳選が必要でした。例えば、腸内フローラに有益とされる乳酸菌は、乾燥した表面には常在できないので、保湿剤として一定の効果を得ることは難しいとされています。そこで、数ある善玉菌の中から注目されているのが納豆菌などと同じ枯草菌のグループであるバチルス菌(善玉菌)です。バチルス菌が保湿剤に最適な主な理由は2つあります。一つは、バチルス菌は、黄色ブドウ球菌の繁殖を抑制し、炎症を抑える効果のある抗ペプチドを生成するという点です。もう一つは、バチルス菌は、多様な湿度や温度においても、常在できる強い菌であるという理由です。

 バチルス菌(善玉菌)とその栄養源が含まれた保湿剤を使って行われたのが、以下の実験です。



ベルギー ゲント大学による研究論文

 

研究論文

 「バチルス菌(善玉菌)を含んだ保湿剤(ボディークリーム)は肌フローラの形成に効果はあるか」(2021年)


研究者

 ゲント大学 微生物生態病理学研究室 教授マリエ ジョーセン 等


研究目的

 以下を検証

  • バチルス菌(善玉菌)とそのエサとなるイヌリン(水溶性食物繊維の一種)を含む保湿剤が肌フローラにどのような影響を及ぼすか

  • バチルス菌が仮眠状態から目覚めて皮膚に常在するか

  • 常在した場合、バチルス菌が増殖し減少するまでの期間はどのくらいか


実験場所

  • 治験者:10人

  • 年齢:14~62歳


実験方法

 治験者10人にバチルス菌(善玉菌)を含んだ保湿剤を塗布(1回)


実験方法

 1週間


使用製品

 バチルス菌(善玉菌)


サンプリングの採取

 身体の同カ所の肌フローラを塗布前、塗布1日後、1週間後の3回採取


結果

 身体の同カ所の肌フローラを塗布前、塗布1日後、1週間後の3回採取

  • 塗布前:肌フローラにおいて雑菌及び悪玉菌が優位な状態。

  • 塗布1日後:保湿剤に含まれるバチルス菌により善玉菌が優位な肌フローラの状態に。

  • 保湿剤塗布から7日後:バチルス菌の数は徐々に減少。※

※バチルス菌は塗布後最大5日間、皮膚上で活性を維持することが確認された。



善玉菌を活用したアトピー性皮膚炎の可能性

 

 前途のように、アトピー皮膚炎は多様な要因が複雑に絡み合っているため、肌フローラにおいて善玉菌優位の状態にすることで、肌のバリア機能が高まると期待されているとは言うものの、それだけで十分な治療方法と証明された訳ではありません。しかしながら、上記実験に使用された善玉菌を含んだ保湿剤を使用し続けたことで、様々な肌トラブルが改善されたという事例が多数あります。





 肌トラブルの原因は、体質、ストレス、食生活など多様であるため、それらを一つ一つ特定し、除去もしくは改善することは、生活環境において限界があります。バチルス菌(善玉菌)を活用した保湿剤によるスキンケア方法は、日々の生活において手軽に取り入れることができる肌バリア機能改善方法として、今後ますます注目されるでしょう。


 

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